概要
芹澤 連 (著) の「戦略ごっこ―マーケティング以前の問題」
を読んだので、内容やノウハウをメモする。
この記事で伝えたいこと
私は主にWebサービスを作っているエンジニアなので、個人開発する際にどのようにマーケティングすべきかについてこの本を読みながら考えた。
結論としては
とにかく認知を取れ
これだけ。データを見ると結局これに帰結する。特別なマーケティングの裏技なんてものは無い。
特に「どんな場面で想起してほしいか?」を考えて、そこをプッシュすることが重要。既存サービスと似ているサービスの場合、差別化部分より似ている部分をプッシュすることで最初は想起を得られやすい。
以降で少し詳しく書いているので時間がある方は読んでほしい。
書籍の感想
全体感
この書籍はマーケティングの基本として書かれている「購買ファネル」「顧客育成」「ブランディング」などに関して、論文などで科学的な方法で報告されている事実と、それ以外のお気持ちマーケティングを明確に区別して書かれている。
後者をやっても良いが、前者については単純に事実であることから、それを無視して後者をやっていても大した成果は得られないよね、という話をしている。
その上で、前者の科学的な成果をサーベイ的に報告しているのがこの書籍である。
ダブルジョパディの法則
例えば、「うちは小さなブランドでニッチを攻めているので少ないロイヤル顧客に支えられている」は基本的に嘘である。真実は「小さなブランドは顧客数もロイヤルティも低い」で、大手と比べるとどちらも低くなる。
ロイヤルティだけを高めることはできず、顧客数とロイヤルティは常に一緒に動く。したがって、「小さいブランドはロイヤルティの高い顧客の満足度を高めれば顧客数が上がっていく」ということもない。
このように、どちらかが低い代わりにどちらかが高い、ということは無く両方とも低くなる、という事実をダブルジョパディと呼ぶ。
ほとんどのブランドに関して、ブランドの浸透率と購入回数は一定の曲線の上に乗ることが報告されている。
細かな差別化を行なってもこの曲線から逸脱して片方だけを伸ばすことはできない。顧客目線で差別化されている必要がある。
顧客はブランドではなく文脈で差別化している。我々がiPhoneを買うのは「下手に失敗したくないし、周りと同じものが良い」と思った時にiPhoneが思い浮かぶから買うのであり、iPhoneというブランドだから買うのではない。
ユーザーの消費行動
特に消費財においては需要が先行する。すなわち、よく言われている
- 注意
- 関心
- 欲求
- 記憶
- 行動
のような順序で発生するわけではない。
実際にはユーザーの行動はまず需要があり、その課題を解決するために想起される商品の集合からランダムピックされるような確率モデルで近似できる。
つまり過去の購買行動でヘビーとかライトとか分類することに大した意味はなく、ヘビーだからといって今後も大量に購入し続けてくれる証拠は全くない。ただの確率の揺らぎで、偏った結果が出たユーザーをヘビーとか呼んでしまっているだけである。
実際にやるべきマーケティング
ユーザーの想起集合に候補として上げられなければ絶対に購買されないし、他の指標もダブルジョパディの法則で達成できない。つまりはいかに多くの文脈で想起を得られるかがコアな部分となる。
したがって、現状リーチできていない層にリーチできる施策を行なったり、よく知らないユーザーが多い場合はまずは他のブランドとの類似点をプッシュし、そのブランドが買われる際に一緒に想起される状態にすると良いかもしれない。
また、ROIが良い施策だけやってれば良いというわけでもない。限界効用逓減の法則的にやればやるほど増分が少なくなっていく。したがって少しやってROIが良い施策をやっても思ったような効果は得られない。
まとめ
「戦略ごっこ―マーケティング以前の問題」について感想をまとめた。
誰かの参考になれば幸いです。